hamaokaのDT日誌

DTラジオパーソナリティhamaokaが気付いたこと、考えたことを書いて行きます。主にビジネスよりの内容になると思います。

ユダヤ人の頭(イディシェ・コップ)②

さて、①では『ユダヤ人とは』について説明したが、今度はユダヤ教について説明させていただきたい。

ユダヤ人に成功者が多いことの要因と、ユダヤ教は不可分の関係にあるからだ。

ユダヤ教の開祖(つまり最初のユダヤ人)は紀元前1800年頃、現在のイラクに住んでいた。彼の名はアブラム(後にアブラハムに改名)。

ユダヤ教は彼の論理的思考から始まっている。(ちなみにキリスト教イスラム教ユダヤ教から生まれており、アブラムはユダヤ教の父でもあり、キリスト教イスラム教の父でもある。そう考えると彼が世界に与えたインパクトは計り知れない)

どういうことかというと、彼は論理的思考によって神の存在にたどり着いている。詳細は下記にて示す。

ⅰ. アブラムは3歳まで洞窟の中で暮らしており、3歳になった時洞窟を出る

ⅱ. 彼は食べ物を生み出す大地に感謝し、大地を信仰

ⅲ. 食べ物は雨が降らなければ育たないため、雨を降らせる空を信仰

ⅳ. 空は太陽に支配されており、大地を暖めることから太陽を信仰

ⅴ. 太陽は沈み月が顔を出すため、実は月が王だと考え、月を信仰

ⅵ. 月と太陽が交互に顔を出すことから、その規則を作った遥かな高い英知をもつものが天上にいるはずだと確信し、その存在=神を信仰

上記ⅰ〜ⅵのステップにに基づく合理性はユダヤ教の核となっている

次にユダヤ教のキーマンとして現れるのがモーゼだ。皆さんも名前くらいは聞いたことがあるだろう。

時代は不明(紀元前)だが、当時ユダヤ人の多くはエジプトに住んでいたが、ユダヤ人が多くなるにつれ、エジプト人が不快感を募らせ、ユダヤ人を迫害し始める(エジプト人による迫害)。これに対し、モーゼはユダヤ人を指導し、エジプトから脱出する(出エジプト、海を真っ二つに割って脱出した伝説が有名)。

その後、聖書によればモーゼはシナイ山で神と出会い、有名な十戒が書かれた石板(文書化されているということがポイント)や神からの口伝による戒律(後にトーラーと呼ばれ旧約聖書により文書化、613個もの戒律がある)を授かる

上記のモーゼの話をまとめると、ユダヤ教の基本は文書化された戒律集である。

ちなみにモーゼが神から授かった口伝は旧約聖書にて文書化されていないものもあり、紀元後に文書化されている。これらは『口伝版トーラー』と呼ばれ、後に『タルムード』と呼ばれる文書の基礎となっている。

タルムードは細かい生活習慣(食事の方法からセックスに至るまで)について書かれており、ユダヤ人社会の宗教・文化的核となっている。

少し話が脱線するが、ユダヤ人の成功の秘訣をこのタルムードに見出すビジネス書がいくつかあるが(特に日本人が書くビジネス書)、現在のユダヤ人にとってタルムードは読んだことすらないことが多く、あくまで研究者が研究する対象というような位置付けのようである。

ただし、ユダヤ人の成功と全く関係がないかというと、そういうわけでもなく、タルムードの内容というよりは文書構成自体が関与しているといえる。

タルムードの文書構成は口伝をまとめた部分(ミシュナ)と、それに対する解釈を記した部分(ゲマラ)で出来ている。実際には一つのページにミシュナと

ゲマラが記されている形になる。

このことが意味するのは、ユダヤ教では戒律自体に加え、その解釈も同じくらい重要だということである。しかもその解釈は想像力を駆使した論理的なものである。

このことは、ユダヤ人の成功とタルムードの関係性に関連するので、心に留めといて欲しい。

さて、ユダヤ教の基本が『文書化された戒律集』にあるということは説明したが、これは土台が出来ただけであり、現在のユダヤ教が完成に至るにはもう少し歴史的なトピックを必要とするため、説明にお付き合いいただきたい。

モーゼの没後、ユダヤ人は現在のイスラエル国のあるカナンという土地に落ち着き、首都をエルサレムとし、イスラエル王国をつくった(紀元前1000年頃)。イスラエルはソロモン王の時代(紀元前970年から933年)に繁栄を極めた。

ソロモン王はユダヤの寺院を建設し、僧侶によりトーラーに沿った祈祷が行われていた。

ソロモン王没後、内紛が起きイスラエルは分断され、イスラエルを含めたいくつかの国ができる。

その中の一つであるユダ王国は隣国のバビロンに占領され、ユダヤ人はバビロンに連行される(有名なバビロン捕囚)。幸いバビロンはユダヤ人には友好的であり、ユダヤ教の信仰を許可する。

しかし、バビロンにはユダヤの寺院がないため、ユダヤ教は寺院を中心とした『中央集権的』な宗教ではなく、『非中央集権的』な宗教に変革した。

祈祷は寺院に代わり『シナゴーグ』と呼ばれる建物で行われ、僧侶の代わりに『ラビ』と呼ばれる人々が祈祷を仕切るようになった。

イスラエル王国では祈祷は世襲制の僧侶が行っていたが、ラビは教育を受けた普通の人がなるため、血筋ではなく、教育程度がユダヤの文化では重要視されるようになった。

ただし、多くのユダヤ人は信仰の自由はあるものの、上記のようなユダヤ教の変革について不満に思い、『バビロン捕囚』を次第に悲劇と考えるようになる。

ここで、ユダヤ教の重要な『メシア(救世主)思想』が生まれる。つまり、ユダヤ人にとって最悪の時にメシアが現れ、ユダヤ人を救ってくれるというハッピーエンドの思想である。

パピロンはその後、ペルシアに占領され、ペルシアはギリシャに占領される。

そして、ギリシャローマ帝国に占領され、それに伴いユダヤ人の地理的分散(前の記事で述べた『ディアスポラ』)が起こる。

この地理的分散により、ユダヤ教の『非中央集権化』と、文書版トーラー(モーゼが神から授かった口伝による戒律を文書化したもの)への依存度が高まっていく。

以上、ユダヤ教の歴史と変遷をつらつらと説明してきたが、ここで本題のユダヤ人の成功の秘訣と関わるユダヤ教のポイントとして、以下の4つにまとめたいと思う。

A.  論理的かつ、解釈が必要(アブラムの神の存在への到達や、タルムードの解釈込みで文書として成立)

B. 最後はハッピーエンド(メシア思想)

C. 非中央集権的(他国の占領によるユダヤ人のディアスポラ

D. 寄付の重要性

(唐突に出てきたが、ユダヤ教の戒律にもあり、ユダヤ人の成功の秘訣に関わるユダヤ教のポイントとして挙げておきたい。ちなみに『チャリティー』の語源はヘブライ語ユダヤ人の言語)の『ツェダガー』から来ている)

ユダヤ人の頭(イディシェ・コップ③)へ続く]